鶏の餌を夜な夜な漁りに来る奴がいるのである。
鶏舎周辺を公園のように美しく整備して、優雅にコーヒーブレイクを楽しもうと思い
カフェスペースまで作ったのに、こうも毎晩無秩序に散らかされたら掃除をするほんの少しの意欲すら失われたとしても仕方のないことだろう。というのは言い訳なのであるが。
手口からして猫やテン、カラスなどではなく、そこそこ体重のある野犬か猪の仕業であろうとは思っていたが、近くで野犬のものらしき糞を発見した。そしてマント群落を形成する蔓植物の茂みの中へと続く獣道も。
何処まで続いているのだろうか。
立って歩くのは困難な茂みの中へと文字通り這うように入ってみた。
もう少しで茂みを抜けるというところで気配を感じ顔を上げると一匹の野犬が悠々と視界を横切って行くところだった。
白昼堂々こんな近くをうろついていやがった!と思いはしたものの、頭に血が昇らないのはこの状況のせいだ。
何せ立ち上がることも出来ない茂みの中で四つん這いという。
偵察中にうっかり敵陣深くに入り込んでしまったゲリラ兵士のようではないか。
映画ではこの後どうなるんだっけ?
ゲリラ兵士と違うのはこちらは完全に丸腰であるということだ。
無いとは思うが、万が一野犬が襲いかかってきたら?
圧倒的に不利な状況に自然と息を潜めていた。
奴はこちらに気付くことなく視界の端へ、別の茂みへと消えて行った。
茂みを抜け出し立ち上がったところで、走り出す気配がした。こちらに気が付いたらしい。
追ったところでどうなるという訳でもないが、追った。人間の怖さを思い知らせてやらねばなるまい。
すぐに道は左右へと分かれていた。
姿は見えない。
希望的観測で右へと行ったが、左は山へ登って行く道だ。
走っていると自分が立てる物音で周囲の気配が分からなくなるので、立ち止まり耳を澄ます。
時々カサコソと音が聞こえるが、あれは鳥だ。
引き返し山へと昇って行く。
この辺りはまだ俺の庭みたいなものと強がったとしても無駄だ、ここは奴の居間なのだから。
大雨の降った時だけ水が流れる水無川に沿って山を登って行く野犬を発見した。
と同時に川下の方で動くものを確認。
唐突に走り出した仲間を追ってきたのだろうか、二匹の野犬が水無川を走って来る。
こちらには気付いていない様子で、岩陰で待ち伏せしていると手が届きそうなところまでやってきた。
「コラ!」と一喝、二匹を混乱に陥れてから、先に登って行った一匹を追った。
しかし足場の悪い山道で四本足のあいつらに敵う訳が無いのである。
まあ、平坦な道でも敵わないのであるが。
過去の追跡は
こちら