我が農場では採卵した卵の表面の汚れを落とし、殻が薄いもの、ひび割れが無いか一個一個チェックした後パック詰めする。丈夫な紙パックに詰めるとはいえ、配達中に割れては困るからだ。
鶏は、若い時には小振りで殻の厚い卵を産むが、産卵日数の経過とともに大きな卵を産むようになる。カルシウムの分泌量にも限界があるのだろう、卵の大きさと殻の厚みは反比例の関係にあるようだ。特大の卵は大抵殻が薄い。
さて、殻の薄いもの、ひび割れているものをどうやって見分けるか?
実は見分けるのではなく、聴き分けるというのがより正確だ。
一個一個指先でコツコツとたたいてみる。殻が薄いもの、ひび割れた卵は、そうでない正常な卵とは違う音を出す。ここで虚ろな音を出した卵は弾き出されることになる。
ところで、ある日、おもしろいことに気が付いた。卵を手にすると指先でコツコツするのが習慣の私は、鶏小屋で産み落とされたばかりの、まだ濡れている卵を手にとり、いつもの癖が出て指先でたたいた。カンカンと非常に硬質な音がして驚いたが、卵が乾くに従って、いつもの聞き慣れた音に変化していった。
卵殻の表面は雑菌の侵入を防ぐ為のクチクラ層があり、産まれた直後の卵表面の「濡れ」がクチクラ層になる(?)と聞いたことがあるが、あのカンカンした硬質な音はクチクラ層形成前の音だったのだろうか?